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幸福な住まいとは パート2

前回パートⅠでは、“住宅とは何だろう”と言うことを話しました。 今回パートⅡでは、“住宅を選択するときの注意事項”を話そうと思います。

まず一番に知ってもらいたい(特に若い年齢層のユーザー)ことは、「住宅を計画するさい、あまり外観やデザインにこだわってはいけない」と言うことです。

何故かというと住まいとは眺めるものではなく、利用するものだからです。あなたはいつまでも若くないのです。
現在の思考や趣味、人格が十年後、二十年後も同じはずはないのです。
住宅にしろ、いつまでも新しくはありません。新しさを感じさせる期間はせいぜい四、五年といったところです。

その後、何十年も古さの中で存続するのです。
なかでも、自然環境による摩耗や汚れ、変色は避けることができません。
住宅はいつまでも新しいもの、と想定なさっている人が多いのには驚きます。
何故なら、新しい住宅を求めようとする時、住宅展示場などで、新しい住宅を見て参考にするからです。
何故、十年も二十年も自然の脅威に耐えてきた住宅を参考にしないのでしょうか、私はいつも不思議に思っています。
住宅は構造物ですから、“耐久性”の問題を重視する人もいるでしょう(阪神大震災以来、特に増えたと思います)。

しかし、この点につきましては、プロかつくるものであり、現在の科学技術、又現在の建築基準法をクリアしている限り、どんな工法であろうとまず心配はいりません。
むしろもっと真剣に考えなければいけないことは、「長く利用できる住宅とはどういうものか?」です。
現代はファッションの時代であり、当然住宅にも、ファッションが要求されています。

しかし、住宅を流行で求めると必ず後悔します。何故なら前記したように、住宅は古くなるものだからです。
十年~二十年たったとき、品格を失って安っぽく貧弱に感じられる家になるか、古さとともに渋さをまし、格を持った家になるか。それは、伝統(木造住宅)を選ぶか、流行(近代プレハブ住宅)を選ぶかで決まるのです。

何にしても、いつの時代でも、長くつづくと言うことは容易なことではありません。
ですから、長い伝統とは、優秀であることを実証しているのです。
一言で言えば、「流行は色あせるが、伝統は味が出る。」です。

工場で見込み生産され、宣伝に大金をかけ、大勢の訓練された営業マンを動員して大量販売される住宅、これは全て、企業の利益追求にのみによってつくられたもので、決して住む人が幸福になるためのものではないことも、知る必要があります。近代住宅には、地下資源(石油・鉄)などを素材とする無機質材(ビニールクロス、塩ビ化粧造作材…・)が多く使用されています。
機械(工場)生産に適し、大量販売しやすいからです。

これが長期間利用する環境に適さないことは、常識的に判断しても(今、シックハウスなど問題になっている)おわかりでしょう。
「石の文化」といわれている西洋の住宅の内部には、有機質材である木材がやたら多く使われていて、「木の文化」といわれている日本の住宅で、木材が敬遠されている。私はこの事実が、日本人の未来を暗示している様で恐ろしく思えてなりません。

生活環境の便利さは、人間の特質や機能性を退化させ、依存心だけを強くします。
便利すぎに馴れた習慣は、労することを嫌い、勤勉な気持ち、思いやる心を失い、人間性を乏しくします。
結局は、惰弱な人間となり、世の中に不必要となるでしょう。
近代住宅はまさに、この便利さを一番の売りものにしているのです。

最後に、八百屋の店頭で、トマトやリンゴ一つ買うのに、よく見比べて確かめて買う奥様方。
それなのに、同じ購入するにしても、比較にならないほど高額の大金を必要とする住宅には、発作的な衝動で選択してしまうことが多い。
いかに虚飾に満ちた現代とはいえ、「住宅の役割」や、「住宅に住む人に与える影響力の大きさ」を知って求めなければ、大変な損害を被ることを、肝に銘じて住宅を選択なさって下さい。